甘い蜜はきみのもの






「貴様という奴は!許さない、殺してやる!!」
「ま、待て待て!落ち着けよッ」


目の前に立っている金髪は、静電気で髪を逆立たせて。
宥める黒髪は、やや慌てている。
そう、蛮と雷帝の口喧嘩。
……であれば、良かったのだが。


「命乞いをする気か!蛮、正直に吐け!」
「正直に吐いたら、殺さねえって約束出来るのかよッ?」
「さぁな。貴様の返答次第だッ!」
「だから、まず落ち着いて聞けっつーの!」


既に、口喧嘩の域を超えていた。
雷帝は攻撃の為にプラズマを発生させ、
蛮は牽制の為にアスクレピオスをうねらせている。

最強最悪の喧嘩だった。


「あれ程、銀次を哀しませるなと言っただろうが!」
「俺は銀次を裏切っちゃいねえよッ」
「なら、何故あんなことをした!?」
「あんなことって、まさか…アレを見たのかッ?」
「そうだ、そのアレだ!貴様、アレは誰のだ!!」


蛮の表情を見て、雷帝は更に怒った。
プラズマが増えて、室内にピリピリと電気が走る。
ふっ飛ばされちゃ敵わない。
蛮はどうにか、弁解を諮ろうとする。


「確かにアレは銀次のじゃねえが、でもな」
「他の奴か!貴様、銀次を差し置いて何をしている!」
「他の奴っていうか、何ていうか…」
「はっきり言え!蛮ッ!!」


今にも、蛮に雷が落ちてきそうだ。
しかし、さすがにここまで言われては限界。


蛮も血相を変えて、反論した。



「うっせえな!テメーのだよ、馬鹿野郎ッ!!」


……しばらくの間。



「お、れの?」
「そうだよ、テメーの為に買ったんだよッ」


ホラ!と手渡されたもの、それはキレイなドロップ詰め。
この前、不○家の前を通った時に
自分が目を奪われていた金色ドロップス。
もらった雷帝は、ポカンとしてそれを見つめている。


「……銀次に、やらなくてもいいのか?」
「テメーが物欲しそうに見てたから、買ったんだよ」
「俺が、もらっても、いいのか?」
「俺がやるって言ってんだ、素直にもらっとけ」
「…ありがとう、蛮……」
「雷帝……w」


もらったそれをギュッと握り締める雷帝。
そんな彼を愛しそうに抱き締める蛮。
完全なるバカップルである。


「たかが飴だけで、あそこまで喧嘩するか……(呆」 by 波児


そう、ここはHONKY TONK。
店内に居た客が、ガックリと肩を落とすのも構わず。
二人はしばらく抱き締め合っていた。



こうして、史上最強の喧嘩は幕を閉じたのである。


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