これでは
すぎる



今日は12月17日。
HONKY TONKでは、ワイワイと歓声が上がっていた。

12月17日は、美堂蛮の誕生日だ。


「おめでとうございます、蛮さん♪」
「おめでとう、蛮」
「んもう、少しは嬉しそうな顔しなさいよ、蛮クンw」


夏実、波児、ヘヴンがお祝いの言葉をかけた。
当の本人はブスッとしている。
それが照れ隠しだということは、誰もが知っている。


「楽しいねぇ、蛮ちゃぁんw」
「オメーの誕生日じゃねえんだぞ、銀次」
「分かってるよぅ。でも、やっぱり嬉しいんだぁ♪」


相棒の銀次は、ふふ〜と笑いながら楽しんでいる。
それを見ながらも、小さな溜息を吐く。

何かしてもらうのは、確かに悪くない気がする。
でも、照れくさくて嫌だ。
自分が照れるより、相手が照れる方が良い。


(何たって、見てて面白いし)


かと言って、彼らにしてやれば図に乗るだろうし。
からかわれるのがオチだ。
さて、どうしてやろうかと考えていた。





しばらくして、祝いの盛りは終わった。
また静かな時間が戻ってくる。


「あー、終わった終わった。ったく、肩凝っちまうぜ」
「……蛮、終わったのか?」
「ん?あァ、終わったぜ、って…お前、雷帝?」


いつの間に、銀次は雷帝になったのか。
内心驚きながら、表はポーカーフェイスで尋ねる。
今日は雷を纏っていない。
ということは、戦う理由で現れたわけではないらしい。


「あ、もしや俺の誕生日を祝ってくれるってか?」
「そうだ。何がいい?」


マジかよ、当たっちまった。
あの雷帝が「祝いたい」だなんて、ちょっとビックリだ。
しかし、これを逃す理由もない。
考えに考えた末、手招きで雷帝を呼び寄せる。
何の疑惑も持たずに、雷帝は隣に座った。


「もっとこっち寄れって。んで、凭れかけろ」
「……? これでいいのか」
「おう。俺様に凭れかけれるのは滅多にねえんだよ」
「アンタの望みは、これだけか?」


雷帝の問いには答えず、蛮は強く抱き締めた。
金髪がビクッと震える。
それだけでは足りずに、額や鼻の頭、至る所にキスを降らせた。


「ぁ、ば、蛮ッ……や、やめ」
「じっとしてろよ」


別に厭らしい行為ではないのだが、いつもの彼に思えなくて。
まるで、小さな幼児を優しく扱うように。
たくさんのキスと、柔らかい眼差しを向けてくる。
これが、蛮の望みなのだろうか?と雷帝は不安になった。

それに、これを続けていたら、


「……少し、控えた方がいいんじゃないか」
「何でよ、俺の誕生日だぜ?」
「だって、銀次に気づかれたら」
「いつ消えるか分かんねえお前だ。
 今日だけでも、めいっぱい甘やかしてーんだよ、俺が」


そう、誕生日だから許される。
いつもは出来ないから。
今日だけは、この哀しい王様を甘やかしたい。


「普通は逆じゃないか?」
「かてーこと言うなよ、俺がそうしたいだけなんだからよ?」
「そうか、アンタがそう言うなら」
「でも、誕生日だしな。もらうものはもらいてえな?」
「……俺、では駄目か?」
「おっ、嬉しいねぇ♪好きに扱わせてもらうぜ、雷帝サマw」


「店ン中で、おっぱじめなさんな、二人とも…」
「ふふ、蛮さん幸せそうですねw」
「銀ちゃんとはまた違う、バカップルって感じね(笑」



微糖に見えて、甘すぎるプレゼント。
それは、味わった本人達にしか分からないのです。




Haben Sie es?





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うぉー、私では書けないこのあまぁい雰囲気。うちでやったらドンパチですね(涙)。
もこ様、ありがとうございました。蛮ちゃん、お誕生日おめでとうなのです。