てばパチンコれば麻雀歩く姿馬券買い


 わーっとそれぞれの椅子に行き、お目当ての台に蛮は車のキーを置くと、と りあえずこの店は現金で行っているわけではないことに気づく。
「パッキーか?」
 めんどくせーと呟きながらも、パチンコに挑むための儀式としてはまんざらでもない。とりあえず、1パッキー(3000円)で調子みるかねー。
 釘師じゃないから仕方がないが、それでも「出る台」「出ない台」というのは大体スタートの穴に銀玉がある程度調子良く入るか、そして一番問題なのは、その台は「当たり台」か「外れ台」なのかだ。これを見抜くのは…毎日通うしかない。だが、ちょっと入った店である程度の確認をする目安というのは大体1パッキーを考えている。上向きならリーチがかかる上にスーパーリーチもかかる。問題はこのごろボタンものが多くてタバコを左手で持っていたら気づいたらリーチ目を逃していたとか…喫煙者を減らそうって考えか!と思ってしまうこの頃。
 とりあえず、3000円のパッキーカードを2枚買い、とりあえず台の前で突っ立っている銀次にパッキーカードと1円玉を渡す。
「やり方は前と一緒。分かるな?」
「うん。玉のチョーセツは隣の人を見てやる。と。」
「上出来。その3000円分が終わったら帰っていいぞ。」
「うん!」
 大きく頷くと、銀次は「やっぱり蛮ちゃん、持ってきてくれました〜。」と話している。もう隣の人を味方につけているらしい。でもま、パチンコ屋も戦場といえば戦場だからな。
 席につき、パッキーカードを入れて、とりあえずマールボロを吸う。この始まる前のタバコ、それと確変ひいた時のくわえタバコほど美味いモンはねーわなー、と思いつつ、ドル箱受けにもなっているアルミの台に設置されているベルトコンベア式の灰皿に吸殻を入れる。台の位置は大体中央あたり。たまーにこのタイプの灰皿を設置してあるところの端っこの台に座ると、喫煙者でも嫌がる臭いと煙で辟易することがある。…出りゃあ万々歳だから無視できっけど。

 さーって、おっぱじめますか。

 BGMはT-SQUAREのアレ。まぁ普通の選曲だろう。「It's a small world」かけられた日には「あー、パチンコの世界も小さいんか!」とツッコミ入れながら打ったこともあったが。

 「玉貸」ボタンを押す。「40」と表示していたのが「35」になるのを待たずに打ちだす。

 この台はここに釘があって…大体ここだろう。

 大体決めたら右手のバーの隙間に1円玉を差し込む。こうして固定することによって、右手は比較的楽にすることができる。

 お、いい感じじゃねーか。

 ふふんふんふん♪と蛮はご機嫌で台を見ていた。


 4時間経過−−−−−


「あ。」
 椅子の後ろに置かれた2箱のドル箱にニヤニヤしていたら急に思い出した。

 銀次。

 とりあえず時短も終わったので、立ち上がる。じっと同じ格好をしていたので腰がボキボキ鳴る。「むーっ」と言いながら帰ったか?やる気ナシナシだったから…。
 角を曲がり、銀次がいる(はず)の台付近を見る。大体が2つか多くて5つ。あれ、一つしかないのがいる。

 銀次じゃん。

 となりのおばちゃんと馬鹿話でもしているのか、笑っている姿。両手ともに動いて…あの野郎、バーの所にパチンコ屋に大抵置いてある濡れタオルを置いて放置プレイしてやが……

「ほら、銀ちゃん、またリーチ…あら、あら。」

「10連チャン…確定です。」


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はっ。



「おめでとう!」
「ありがとうです。」

 きゃーっと、隣や周囲の人と握手している。銀次は知らないようだが、勝っている者と握手したりするとその人のツキを分けてもらえる。というわけ分からないジンクスが存在したりするのだ。だが、勝っているヤツは自分のツキを分けたくないから握手はしない。…銀次は大ぶるまいだ。笑顔付きの。
 まぁ、あの顔見たら、ハッピーカムカム、ラッキーカムカムな気分にゃなるかもな。と思いつつ、銀次に近寄る。
「出てるみてーじゃんか。」
「うん。5回回ったら確変ひいて、ずっとこのまんま。」

 500円も使ってないんですか?

 「玉貸」の表示を見る。確かに「35」で止まっている。しかも(この場では流石にきけないが)電気も電波も何もやっていない。怖いオニーチャンもいない。
「ドル箱は?」
「いっぱいあるからって、お菓子とか交換してくれる所にあるみたい。」

 みたいっ…て。見にいって悦に浸る気も全くないんですね、銀次くん。

「蛮ちゃーん。おなかすいたー。」
 10連チャンのど真ん中で言うセリフか?それ。ま、左手はちゃんとドル箱に行くように玉を移動しているようだけど。
「あー、タマよこせ。」
「え、切るの?」
 真っ青になって自分の股間を押さえる銀次。
「違う!そのタマじゃねぇ!」
 そこ切るとどーなるか分かっているのか?そんな金がどこにある!その前に
てめーはパスポートすら取得できねーだろーが!とか言いたいことは山ほどあ
ったが、とりあえず冷静に、れいせいに。
「あー、パチンコ玉か。…ちょっと間って。はい。」
「サンキュー…って、満杯のドル箱そのまま渡す馬鹿がどこにいる!」
「え?ここ?
 どうやら馬鹿=自分と認識している模様。
「ドル箱はもとの位置に…ほれ、そこにコップみたいなのあんだろーが。それ
よこせ。」
「はい。」
 プラスチック製のコップのような容器で玉をすくう。
「パンとおにぎり、どっちがいい?」
「んー、おにぎり!」
「あら、あらあらあら。」
 画面を見ると、全回転リーチ。

 なにぃっ

「777…11連チャンだ…。」
 近くにあった新しいドル箱を銀次にくれてやりながら、俺はふらふらと計量
機があるところへと向かった。

 5往復して、おにぎり4個とブラックコーヒーとヤク○トとパックの茶とマールボロ2つ(おにぎり2つとブラックコーヒーとマールボロ2つは俺様をパシリに使った正当な報酬)を持って、銀次のもとへと戻る。
「あー!ヤク○ト!」
「待て!タレるな!」

 …20パーセントは縮んでいたな。やれやれ。

 俺は銀次に先におにぎりとパックの茶を渡し…ペリリとヤク○トの銀紙を開けた。
 こいつが開けると中身をこぼす…もあるが、嫌がるのだ。
 ほれ、口の中にツメモンしてるヤツがアルミホイルを口に入れると「ナンとも言えないイヤーな感じになる」と一緒らしく、銀次も指先が「ヤな感じ」になるらしい。まぁ、ツメモノっつーのは金属だから、アルミホイルとかの金属を口の中に入れると人間の持っている微弱な電気が流れて「イヤーな感じ」になるってことだから、銀次も多分、それなんだろう。ああ、デタラメ野郎。
「蛮ちゃーん、ヤク○ト〜。」
 げ、お前、食べるの早っ!とりあえず手渡し…。

 何故ヤク○トを両手で飲むのか理解できねぇ…。

『284番のお客様〜台にお戻り下さい。繰り返します…』

 やべっ。

「銀次、またな。」
「あ、蛮ちゃん。」
 慌てて駆け出そうとする俺。戻らないと全部没収になっちまう。
「…なんだ?」
「これあげる。」
 手渡されたのは…3500円ぶんのパッキーカード。
「…………………おお。」
 なんかもう、ちょっと負けた気分で席へと戻った。


「蛮ちゃん、疲れた。」
「うるせー。ほれ、換金してやっからそれ渡せ!」

 あれからラストまでいた俺たち。

 俺は…まぁ、とりあえず、勝った。

 銀次は………くそ、あのデタラメ野郎。
 15連チャンさせた後、ノーマルで1箱出した後、また10連チャンさせやがった。で、時短でまた確変ひいて5連チャンの最中に「蛍の光」が鳴った。故に「保険」として2箱ついて、33箱。…計算が違う?いや、「最初のドル箱」を忘れてはならない。銀次は夕食と朝食のためにオニギリとパンを交換し、無理やり俺が「教授代」と言って、マールボロ1カートンせしめてもまだまだあった。渡された火付け石の入ったカードの束を俺様が取ろうとしたら…。

「ダメです。」

 きっぱり断られた。
「貸せ。」
「ダメ。」
「よこせ。」
「ダメ。」
「銀次!」
「ぜーーったい、ダメ!」

 言い合っているうちに俺の番になり、俺のみのぶんを換金する…ちっ。
 とりあえず、明後日の競馬に全てを賭けるか…。
 銀次は恐る恐る…とカードの入った箱をとんとんとん…と置いた。
 
 ディスプレイに飾られた金額は…56万とんで500円…………。

 うそ…ここ、めっちゃ換金率高い………。

 がこん、という音とともに金が出される。
「ぎーんじ。」
「ダメ。」
 手を出そうとしたら、払いやがった。このヤロー。
「蛮ちゃんに渡したら、バクチしか使わないからダメなのです。」
「「しか」って何だ!」
「じゃあ、他に何に使う?」
「う……タバコとか…」
「あと、レッカー代でしょ?…だから。」

 このお金は俺が使いまーす!

 銀次ははーい。と手を挙げて、宣言した。そのまま金を上着のポケットに入
れる。…車に着いたら勝負だな。

 ふっふっふっと心の中で俺様は勝利宣言した。
 銀次が寝たら勝負だ!






「人のモノを盗んだらいけないって、言われたことありませんか?蛮ちゃん。」
 朝一番の銀次の言葉はこれだった。
「まぁ、昔「奪い屋」だって話だけど…相棒のものは奪ってはいけません。」
 めっ、と怒る。その姿は…可愛いが…オーラは怖い。
 いつも停車している駐車場に、そして俺たちに朝日が差す。


 金色の髪の毛が反射する。むん、と両腕を組んだ姿が影となってうつる。

 夜中にポケットに入っている金を拝借しようとした結果の姿の俺の影がうつる。
 いや、黒コゲだから影と一緒かもしれねぇ…。あいつ、俺が手を伸ばしたのを見計らって俺の手を掴むと、車の中だっつーのに電撃とばしてきやがった。 しかも計算したかのよーに手加減して、長時間。目ン玉出るかと思ったよ…っ
たく。

 こーなれば…。

 くいっと銀次の右手を掴み、引き寄せ、そのままキスする。もちろん、オトナの、だ。
「ん……ふぅっ……」
 驚きと息継ぎが出来ない苦しさでもがくが、右手の握力は知っているよな、 銀次クン。
 というわけで、左手で上着のポケットを…
 
 ぴく。

 銀次が反応した。


 瞬間−−−−



 閃光が走った。



 気がついた時は、結構太陽が昇っていた。
 車の中で携帯電話が鳴っている。よれよれになりながら着信を見るとHONKYTONKからだった。
「……うス。」
 不機嫌なまま電話を取ると、楽しげな声がBGMと、ご機嫌な波児の声が耳に入ってきた。
「よぉ。おお、銀次、こっちに来てるぞ。」
 へーへー、そうですか。
「ああ。ヘヴンにも話しておこうかと思うが…これから奪還料は銀次に渡すことにするから。」

 ……………ちょっと待て!

「どーゆーことだ!」
「どーゆーことも。」

 つまり、銀次はHONKY TONKに行くなり「いつも遅くなってごめんなさい。ツケ、どのくらいか分からないけど、今回はこれだけ払います。」と30万ほど手渡したらしい。胸ポケットから。
 波児が「良い子にはたまにはプレゼントやらないとな。」と夏実に買いに行かせたらしい。

 チェーン付き財布を………。

「全部聞いたぞ。まぁ、それだけの電撃くらってもまだ生きてるお前もデタラメだな。」
「るせー!サンポール!」
 言って、通話を切った。とりあえず、ヤク○トでも買って、ご機嫌とりしねーとな。


 だが…
「競馬では勝つ!」
 決心していた。確信していた。その金でそのままベッドインだ!あのチェリーにいい加減手をつけておかねーと周りがうるさそうだからな。

 俺は天高く昇った太陽に誓い…コンビニへと向かった。


 とりあえずは、行っても絶対に無視してくる銀次を手なずけるためのアイテムを買いに。 


さて、説明。
 けっこーマイルールにのっとってます(笑)。ま、もうやめたけど

「右手の運動」「1パッキー」「始まる前のタバコ」「確変中のタバコ」は私と姉と姉の知人との共通語です。
あんまり気にしないで。
銀ちゃんにヤク○ト(しかも両手で持って)飲むのって似合ってると思っている私は末期でしょうか。
次回、競馬編です。
何だ神田の神田橋で長いよ、この話。