ぽ か ぽ か


 きらきらした光。お星様が地面におっこちたみたいだね。

 今日はクリスマス。無限城の人たちはイヴの日の昨日やったんだ。蛮ちゃん
は「テメェと糸巻きとサルマワシだけで行け」って行ったからしぶしぶ行ったけど…結局迎えに来てくれたんだ。ありがとう、蛮ちゃん。
 今日は無限城外で知り合いになった人とかで集まることになっているんだよ。場所は…そう、ホンキートンク!

 街を見た時、「キリスト教圏の奴らはここまでこんな飾りはしねぇんだよ。」って蛮ちゃん言ってたけど、ニホンジンだからオールオッケー!

 クリスマス・ツリーももとはりんごを吊り下げただけのシンプルなモンだったんだって。それが今はキラキラのぴかぴか。電気の無駄遣いかなぁって思うけど、キレイだからそれでよし。

 あのね、蛮ちゃんと、みんなで祝うためのこまごましたものをたっくさん買って、ホンキートンクに帰るところなんだよ!みんな来るみたいなんだ。楽しみだなぁ。

「おい、そこのアホ。」

 アホって…ひどいなぁ。

「しゃーねーだろ。アホ面さげて歩いているんだからアホ決定、確定。」
「じゃあこの荷物、少しは持ってよー!蛮ちゃん歩きタバコはダメなんだよ!」
 そうなんです。蛮ちゃんは買うだけ買って、俺に荷物全部持たせているんです。本人はタバコぷーかぷーか吸いながら歩いているんです。ヒドいです。
「アホ。俺様は頭脳労働。テメェは肉体労働って昔から決まってるだろーが。」

 へー、蛮ちゃんって、頭脳が労働するんだ。歩いたり走ったり…

「…おい、銀次。多分今思っていることは全然違うからな。」

 え?違うの?

「頭を使うことを頭脳労働というんだ。分かったか。この俺様がいないと買い物行く前に遭難する方向音痴アホゥが!」

 うぅ…それを言われるとなんとも言えません。

 あ…でも、この角を曲がると、ホンキートンクは目の先…だと思います。大体似たような建物が多すぎるのです。ビルビルビルビルビルばっか。分かりにくいです。…でも、今日は、結構分かります。みんな飾り物してるもんね。
「クリスマスって、松ってやつもかざる…イテッ!」
「アホ。あれは正月飾りだ。」
 正月。んーと、1月の最初のことを指すんだよね。
「なんで一緒に飾ってんの?」
「面倒くさいからだろ?」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだ。なんてったって、日本にゃ八百万の神々っていって、どんなモンにもカミサマが宿るって考えだからな。」
「ふーん。」

 よくわかんないけど、すごいんだなぁ、と思う。

 ビルにも、電柱にも、もう葉っぱがなくなってはだかんぼうになった木にもカミサマがいるんだって。それってすごいよね?

「でも、誕生日がないから祝えないよね?キリストさんが生まれたからクリスマスってあるんでしょ?」

 そうだよねー。フシギだなぁ。

「だからいいんだよ。」
 蛮ちゃんはそう言って、てくてく歩く。あー!ホンキートンクが見えてきたぁ!
「なんで?」
「いつでもどこでも、神だのみっつぁ、ニホンジンの特権だ。」
「でもあんまりどのカミサマも強くないよねー。」
「ったりまえだろ?」

 わわっ、ポイ捨てはダメなのです!

「基本は自分なんだからよ。」
「んー、それは?」

 蛮ちゃんがパチンコに負けたり、お馬さんのレースで券を破ったり?

「………いったぁ、なんで殴るのさぁ!」
「なんとなく。お前が考えていることが読めた。」

 ちぇっ

「でも、自分の意思で動くのはキホンなんだね!」
「おぅよ!わかってきたな。カミナリ小僧。」
「まだその名前を言う…美堂くん!」

 そこで二人で顔をあわせ、同時にあははははと笑いあいながら、ホンキートンクのドアを開けました。

 寒い寒いところが、ぽかぽか。

「おかえりなさーい!」と夏実ちゃん。
「おつかれさま。」とレナちゃん。
「遅いわねぇ。どっかで迷ってるかと思ってたわよ」とはヘヴンさん…それは俺だけです。蛮ちゃんがいたら絶対に間違えません!
「ッス、お疲れ。」とマスターの波児さん。
「こんばんは。」とカヅっちゃん。
「よォ。」って士度。
「どもです〜、銀次ハン、美堂ハン。」…って、笑師。もう飲んでるの?
「本当にもう、あんたたちが揃わないと始まらないじゃない!」と卑弥呼ちゃん。

 みんながみんな、自分の意思で動いて、ここにいるんだね。

 外は寒いけど、サイフも寒いけど、ホンキートンクもぽかぽか。こころもぽかぽか。

「こいつらが来たから始めるか。」
 波児の言葉に、皆がわーって騒ぎます。俺は袋の中身を夏実ちゃんとレナちゃんに渡しました。
 ビールとジュース(俺たちも未成年だけどビール。でも夏実ちゃんたちは…なんて言うのかな?よくいえないけど未成年だからジュース)の入ったグラスが皆の手にいきわたります。
 「銀次さん、乾杯の音頭をとってください。」ってカヅッちゃんが言ったんで、言ったんだ。

「みんながずっとぽかぽかの心でいられますように、メリークリスマス!」

 メリークリスマス!って皆が言って、くーっと飲み物を飲んだ。何で外が冷えているのにも関わらずビールとアイスは美味しいんだろうね。フシギ。
 ビールを飲んだあと、思わず「ぷはぁっ」って言っちゃうくらいフシギだよ。ほら、カヅっちゃんも、士度も、「ぷはぁっ」て言ってる(カヅッちゃんは小声だったけど、ちゃんと聞こえたもんね)。その後、ワイワイガヤガヤの大騒ぎ。今日はケンカなしのパーティだよ。蛮ちゃん、気をつけてね。
「銀次。」
 波児さんがビールの缶を差し出しながら話しかけてきた。なに?
「お前もいいこと言うじゃねーか。普通はいえないぜ?」
 そうなのかなぁ?目でそうなの?と蛮ちゃんにききました。
「お前はデタラメだからな。あーゆー事をサラッといえるデタラメっぷりはサイコーだぜ!」
 デタラメでたらめって言うけど、蛮ちゃんの目はすごーく優しかったです。

 それがすごーく嬉しくて、また心がぽかぽかになりました。

 みんなみんな、ここに集まったけど、敵とか味方に分かれたりするけど、今日はこのぽかぽかのホンキートンクの中で大騒ぎ。あ、ケーキ!俺、おおきいやつ、チョコが上にのってるとうれしいなぁ…え?ガキ?いいじゃん、卑弥呼ちゃん。

 こうして、クリスマスのパーティは始まったのでした。

                                    おしまい。



めりくりー。とりあえず、良いクリスマスを。
こんなにほのぼのした話を書いたのは久々です。管理人が戸惑ってます(笑)。