半 年 前 の大 騒 ぎ |
「あー、春だぁ。」 ほけほけと青空見ている銀次。 「テメェの頭と一緒だボケ。」 ぷかぷかとタバコ吸っている蛮。 「これから毛虫が育って…落ちてくるねー。毛虫って、蛮ちゃんの頭より…いたっ!」 「オソロシイ事を想像すんじゃねぇ!アホ!」 怒りマークを拳に浮かべ怒鳴る蛮。 「だってさー、春なんだよ?はーるー。」 くるん、と蛮の方を向く銀次。 「そりゃあ、春だ。」 日差しはぽかぽか。腹が減っていなければ昼寝でも良かっただろう。 「あー、半年前が嘘みたい。」 ぽつっとこぼした銀次の言葉に、蛮は苦笑を浮かべた。 「あんときゃあ俺も驚いたさ。」 ひょこっと銀次が顔を向ける。 「えぇーっ!蛮ちゃんでも?」 ゴン☆ 「何を言う。この天才美堂蛮様に向かって。」 「うー。ぼーりょくはんたーい。」 べふ。 「うぉっ!タレんな、頭にひっつくな!ウニじゃなくてイソギンチャクにしたことあんだろ!タレダイブで!」 「こんかいはへーきでーす♪」 ビチビチと音をたてながら喜ぶ銀次。 「今回、は?」 ぶちっ あ、キレた。と銀次が思った瞬間、視界が変わり、蛮が目の前に現れる。 「そーいやーこの間も俺様のかっこよくキメた頭をぐしゃぐしゃにしてたなぁ。」 「へ?いつ?」 んーとんーと、とちっこい腕を組んで考えている銀次に蛮は完全にキレた。 「一度記憶を取り戻してこーい!」 げこしっ! 「んあー!」 銀次は星になりました。 「…ったく、人の頭の上で爆睡しやがって…」 やれやれ、と見上げると、無限城。 「半年前……か。」 あんときゃあ大変だった。と、蛮も思い出す。 「一週間、地獄だったな、ありゃあ。」 普通の生活をしている者ならともかく、銀次たちにとってはとんでもないイベントが襲いかかってきたのである。 そう、国勢調査という名の、大イベントが。 ![]() ホンキートンクは10月に入って、あきのよなが、というのになったみたいです。俺たちはいつものことで仕事がなくて、カウンターでぼへーとしてました。蛮ちゃんは隣でパチンコ……なんとか法!という雑誌を読んでます。あれのどこが楽しいのか、俺にはいまだに良く分かりません。 もしも、あの時、ドアが開かなければ、もちょっと違うことが起きたのかなぁ…んー、良く分かりません。 でも、ドアは開きました。そして、一人の良く知ったおっちゃんを入れました。 「いらっしゃ…」 「天野銀次ィィィィィィ!」 うわっ!いきなり! 「な、なんですかぁぁぁ!俺、何も悪いことしてませんよーぉ。」 入ってきたおっちゃん…藪北警部、いきなり俺を名指しで言うんだもん。驚いちゃうよ。 蛮ちゃんに殴られるすんぜんみたいな、頭をかばう格好をしてしまいました。 「や…藪北警部、彼、は?」 「ああ、元VOLTSリーダー、『雷帝』だ。」 うひょお、という声があがります。後ろを見ると、二人組がいます。 「…藪北警部、どういうこった?」 蛮ちゃん、復活はやっ! 「どうもこうも…この時期、無限城が大盛況になるだろーが!お前らが人員整理してくれねぇと裏新宿は大騒ぎだ!」 「?」 「?」 俺と蛮ちゃんは二人して見合わせてしまいました。なんだろう? 「これじゃないか?」 波児さんがひょい、と出してきたのは…封筒? 「国勢調査?」 こくせいちょーさ……… 「あああああああああああああああ!」 思いっきり思い出してしまいました!俺。 ゴン☆ 「うるせぇ、銀次。」 椅子から落ちそうな格好でも、蛮ちゃんは器用に殴ってきました。うう…ぼーりょくはんたい。 「今回は俺がいるけど…次回からはこいつらが担当になっからなぁ。」 と、後ろの二人組をあごで指します。うん…藪北警部になんか気配というかなんというか…似てるなぁ。 えーっと、次回いないってことは… 「なんだよ、もうリタイアか?よく無限城含む裏新宿担当で死ななかったな。」 ケッと笑いながら、蛮ちゃんはタバコに火をつけます。 リタイア……えーっと、この間テレビでやってたな…えーっとえーっと… 「そっかー!」 ぽん、と手を鳴らして俺は言いました。 「藪北警部って、ダンコンのセダイなんだー!」 ばばばきぃっ …蛮ちゃん、三連発のゲンコツは痛いです。ううぅぅ。 「それ言うなら『団塊の世代』だ。…ったく。」 はぁ、と蛮ちゃんはため息をつきます。 「そっかー、もうそんな時期なんだー。」 …………………… 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 ゴン☆ 「だからうるせーって言ってるだろーが!」 「そんなゴンゴンゴンゴン叩かないでよ!」 ぎゃいぎゃいと蛮ちゃんとケンカしてると、のしっと右肩におっきな手が置かれました。ぎ、ぎ、ぎ、と振り返ると、藪北警部の顔が。 ひきつってる。ひきつってます。 「天野…おい、今の無限城のロウアータウンは新生VOLTSでマクベスが やってんだってなぁ?」 「う、うん。」 さすが藪北警部。警察でもその情報を知っているのはおそらく彼くらいじゃないかなぁ? 「なら、こいつら面通しさせろ。」 ずずい、と二人を目の前に持ってきます。あぁう…俺よか全然年上の人が怯えてるぅ… 「いいけど…?」 カラコローン♪ その時、またドアが開きました。今度はもっと良く知っている顔です。 「あ、士度!」 「よぉ、銀次。」 「…今日は厄日か?藪北警部に腰巾着、んでサルマワシ…」 カラコローン♪ 「あ、カヅッちゃん♪」 「こんにちは、銀次さん。」 「…糸巻きもかよ…なんだって…」 「銀次さん、士度、戻らなくていいんですか?国勢調査ですよ?」 はい。そうなんです。 「うん。帰らないと。」 士度を見ると、士度もこっちを見ていました。 「そうだな。」 うん、と頷いてくれます。やだなぁ、外に来てから初めてだから、帰らないといけないのかぁ。 「ちょっと待てや、コラァ。」 …えーっと、蛮、ちゃん?なんでそんなに怒っているの? 「俺様にちゃんと分かるように説明しろ。」 あ、そか。 「蛮ちゃん、あのね。」 俺と士度… 「…戸籍、ないんだ。」 はっとしたように見る蛮ちゃん。もう全部分かっちゃったみたい。 頭いいなぁ、蛮ちゃんは。 「銀次さん、MAKUBEXから伝言を預かってます。」 カヅッちゃんの言葉にハテナマークを顔いっぱいにしながら「なに?」とききます。すると。 「MAKUBEX、前回の国勢調査の時、いなかったでしょう?」 「あ…」 言われてみれば…そうだ。うわー、大変だぁ。 「…というわけで、ゲットバッカーズにMAKUBEXから依頼です。『無限城のある程度の平穏を奪還して欲しい』とのことですが?」 「受ける!というか…俺だけでも…」 うわぁ、マクベスだけじゃあ大変だよぉ。 「おい。諭吉は沢山用意できんだろうな?」 いきなり蛮ちゃんが入ってきました。そうです。金額こーしょーは蛮ちゃんの役割です。 「はいはい。前金でこれだけ預かってますよ。」 と封筒を蛮ちゃんに手渡します。…ぶ、分厚い。 「残りはいつもの平穏に戻った時に渡す、との事です。」 にっこりとカヅッちゃんは笑いました。 「………銀次。」 「んあ?」 なぁに?蛮ちゃん。 「お前、帰らないといけねぇ…って言ったな?」 「う…うん。」 だって…あの大変さは… いきなりぐぃっと髪の毛を引っ張られます。痛い!いたいよっ! 「このナリでか?このヒヨコみたいなキンキラキンのパツキンでか? モロに雷帝が歩いているって宣伝してんじゃねーか!」 ううう…そーでした。 「そこは手抜かりありませんよ?」 にっこりにこにこと笑いながら、カヅッちゃんは何か小さなビンを取り出しました。 「銀次さんには髪の毛の色を変えて頂きますから。」 士度も、蛮ちゃんも…全員、ぎょっとしてカヅッちゃんを見ました。 「無限城特製の色変えシャンプーです。ばっちり根本から変えて、1ヶ月は全く落ちません。こっちのシャンプーを使わない限りは。」 と、シャンプー?のビンを出してきます。うう、どこからでてくるんでしょう? で、まだまだ出てきます。今度はなんか小さな透明な袋です。それぞれ色がついてます。 「何色にしますか?銀次さんは金髪ですから、黒髪より全然綺麗に染まりますよ?」 ばさばさばさ、とカウンターの上に置かれます。黒は………昔の色だからやだなぁ。赤?うーん。緑?うーん。 「蛮ちゃん、選んで?」 こーゆーのは蛮ちゃんにお願いするのが一番! 「あぁん?」と言いながらもがさがさと選んでくれます。黒は…あ、はじかれてる。良かった。 「これくらいならいいんじゃねーか?」 ちょっとして、蛮ちゃんが取り出した色は… 「栗色…か。」 ふぅん、くりいろっていうんだ。士度も良く知ってるなぁ。 「おい、波児、風呂貸せや。」 蛮ちゃんの言葉に波児さんは「へーへー」とお風呂がある場所を親指でくいくいと指します。ありがとう、波児さん♪ カヅッちゃんは蛮ちゃんから小さな袋を受け取ると、最初のシャンプー?のビンに入れて、かき回してます。 「はい、銀次さん。これを使い切るまで洗って下さい。」 「えーっと、体を洗うと、この色になっちゃうの?」 俺は一番心配してることをききました。すると「大丈夫ですよ。」と答えが返ってきました。ふぅ。一安心。 「じゃあ、行ってくるねー!」 俺はどきどきしながらお風呂へと向かいました。 「わーい!4日ぶり〜♪」 ゴン☆ 「ばんちゃぁぁぁん、ケータイ投げちゃダメだよぉぉぉ。」 「るっせぇ、他人に変なこと教えるな!さっさと行け!」 「はーい。」 俺が風呂のドアをしめると、蛮ちゃんとカヅッちゃんと士度と波児さんの声が小さくではあるけど聞こえてきました。えーせー面?について蛮ちゃん、聞かれてるみたい。ごめんね。蛮ちゃん。 それでは天野銀次、初めて、髪の毛染めてみます! …その前に、服、脱がなきゃ…えへへ。 |
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というわけで、はじまってしまいました。
いきなり藪北警部を出したかったのは…
実は…この話に入る前にもう一つ話を用意していたのですが
…うまくまとまりきらずに先にこっちがアップとなりました。
無限城ならではのイベントだと思います。うん。きっと。…たぶん。