衛生面がどーのこーの言う前に、金ねーんだよ。ったく。ヨソのサイフの中まであーだこーだ言ってくんな!この親衛隊ども!

 あー、タバコタバコ。ぷはー。

「で?」
 と藪北警部に視線を移す。完全に隅に追いやられてたが…いつのまにやらボックス席へと移動してた。抜け目ねぇな。
「美堂、お前も行くなら大丈夫だな。」
 あぁ?
「天野の…方向音痴はどうにもならねぇから。」

 ………ルーキーさん以外全員が頷いた。あれはもう、デタラメだ。

「そういえば…久しぶりだな、絃の花月とビーストマスター。」
「そうですね。」
「無限城以来か。」

 は?

「お前ら、こいつ知ってんの?」
「美堂…年長に向かってこいつたぁ…」
「いいだろ、ダンコンの世代。」

 このオヤジはこんくらいで片づく。サルマワシよかある意味楽だ。

「ええ。僕が会った時は…四天王が揃ってましたね。」

 ほー、やっぱり時間のずれがあんのか。

「俺が会った時が最初か?」

 げ、サルマワシのほうが早かったのかよ!

「…本当に驚いたよ、あん時ゃ………まさか金髪中学生みたいのが『雷帝』だって言うんだからな。」
 うわぁ、思い出話。略して「おもばな」…ここんとこ、1時から8チャンばっか見てたかんな…。ネタとしてはちと古いけどな。
「銀次もその頃はまだそこまでは広がってなかったからな。雷帝って呼ばれてるみたいだー。と言ってたし。」

 昔もそういう意味では変わってねーんだな、アイツは。

「僕が風雅のリーダーとして相対した時には、もう雷帝の名前はロウアータウンで知らぬ者はいなかったですし。…広がるのはあっという間でしたから。」

 おお、何か銀次からも語られてねぇ無限城かこばな!ウザいが耳に入れておいて悪いこた、ねぇな。

「確かにそうだったな。俺も警察戻ってしばらくしたらしきりにツナギをとれと命令受けたな……ロウアータウンの暴君とパイプラインができたら警察が介入しやすいって軽い考えで…ったく。」
「あんな所に警察が入ったら殉職者が日本一になるな。」

 うんうん。サルマワシのくせして良く分かってやがる。

「一度…でしたか。『家族4人殺したヤツがここに逃げてきてるはずだから引き渡せ』と来たのは。」
 藪北のオヤジ、ンなことしたんかい!無謀な…
「そうだ。初めて会った時も…そん時も…何故か天野が近くにいたんだよな…ありゃあ不思議だった。」

 デタラメだからな。アイツは。「望めよ、されば開かれん」ってか?

「あの人は…迷子になると、何か問題も拾ってくる時があって…」
「MAKUBEXもそうだったんじゃなかったか?」

はへ?あのヒッキーが?

「ちょ…その話…」

「じゃっじゃーん!」

 その声に、全員がそっちを向く。


 ……………金髪じゃなくなると、他人に見えんな。マジ。


 やや濃いめのブラウンの髪の毛が、水滴をうけてツヤツヤと光っている。
「できたよー!どう?蛮ちゃん!」
 まぁ、中身は全く変わってねーが。はしゃぎすぎだ、てめぇ。
「あーあー、似合うにあう。」
「シツレイな!」
 俺様の返答が気にくわなかったか、銀次は…いきなりタレるとノミのジャンプかくやという跳躍で俺の隣の席につく…

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」

 濡れた髪の毛のままで俺の上着めくって、背中に濡れた髪の毛押しつけてきやがった!つめてぇ!こそばゆい!ガキか!テメェは!!

「…ンの…銀次の…分際で……」
 隣の椅子にまだひっかかってた足を右手でひっつかむと…
「…こンの野郎!」

 どかぁん!

 ほぼ手加減無しで床にたたきつけてやった。はぁ、やれやれ。
「うきゅぅ…」
 ああ、それでも出てくるお前がデタラメでいいさ……ったく。
「ぎ、銀次さん、タレたらダメです!」
「髪の毛もとに戻る!」

 あ、ホントだ。金髪だ。

 瞬間、リアルに戻った銀次は…染めた色になっていやがる。…というか、ここ最近の銀次を知っているヤツしか抗体がないだろーな。

(藪北警部…『雷帝』は、人間ですか?)
(…俺も、今それを考えてた所だ。)

 さもありなん。さもありなん。

 とりあえず、ヘッドロックキめながら、藪北のオヤジの隣のボックス席へと移る。…テメェらも来んのかよ。うぜぇ。
「波児、紙とペン貸してくれや。」
 ブルマン、ツケで。と付け加えて、な。
「何するんだ?」
「あー、ちょっと…」
 ぐぃっ、と銀次の頭を押さえつけ「こいつに注意事項をしておかねーと。ロウアータウンは大騒ぎだ。 」と言ってやった。

 そしたら…

 波児…速攻で出してきやがった…

「銀次、いいか?これからこれをきっちり守れ。いいな?…って、タレて逃げるな!

 何で糸巻きとサルマワシの間に逃げる!

「んあー。だって、息できなくて気絶しそうだったからー!」
 ヘッドロックしたままだった。まぁいいや。
「隣に帰ってこいや。」
 ほれ、こっち。
「あい。」
 ビチビチと音を放った瞬間、リアルに戻った。

 藪北のオヤジたちは…本気で銀次を人間かどうかの視線を向けてき
た……。
「波児さーん!ブレンドー!ツケで。あ、あと、お風呂ありがとうございました!」
「あいよ。」

 波児も苦笑していやがる。

 ま、銀次は銀次だ。変わりはねぇ。

 さっさと俺は注意事項を書くことにした。

戻る 次へ


というわけで、はじまってしまいました。
いきなり藪北警部を出したかったのは…
実は…この話に入る前にもう一つ話を用意していたのですが
…うまくまとまりきらずに先にこっちがアップとなりました。
無限城ならではのイベントだと思います。うん。きっと。…たぶん。