「なにー なにー なにー?」
 オレ、なにがあったんでしょう。んとね、お外で今まで見てきたお花をみーんな出して、つんであそんでいたんだよ。そしたらカミナリがピッシャーンって。いきなりだよ!わーんわーんわーんわーんわーんこわいよこわいよこわいよ。
 うつぶせてビチビチとしてたオレのかたを、だれかがつかみました。そのまま立たせてくれます。ふりむくと…わぁ、おひさしぶり。
「すまない。電気がもれてしまったようだ。」
 らいてーでもそんなことがあるんだね。
「だいじょうぶか?銀次。」
 うん。だいじょーぶぃ、だよ、らいてー。…あれ?お顔がしずんでる。
「すまない、おれさえいなければお前は…」
「んあ?らいてー?」
 ずぶずぶしずんでるよ!だめだよぉ
「蛮としあわせにくらすことができただろうに…」
「そんなこというんじゃないですーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
 オレはらいてーをしかりました。かなしくて、かなしくて、なみだがでてきます。
「銀次……?」
「…らいてーもオレも、いっしょなの。」
 たとえタレてるっていわれても、へんなせいぶつっていわれても、いっしょなの。銀次とオレとらいてーは、いっしょなの。
「…一…緒……」
 そなの。オレはりょう手をひろげた。
「ね、らいてー、だっこ。」
 らいてーはね、ちっちゃいこどもはだっこしたことないの。だからオレがれんしゅーだい。
「あ、あぁ。」
 ひょいっとだっこしてくれた。やさしいんだよ。らいてーは。
「…かるいな。」
「オツムミタイニカルイって蛮ちゃんも言ってたもん。」
 バカにされてるのかな?ちがうのかな?分かんないけどかるいみたい。そのちょーせーは銀次がぜんぶやってるから。
「でもね、でもね。」
「うん?」
 オレはらいてーの左むねをすりすりした。
「ほら、心ぞうの音がするんだよ。」
 こんどはらいてーがオレの左むねに耳をあててくる。あっ、わらってる。くすっ、て。
「…本当だな。」
「らいてーからもするんだよ。とくん、とくんって。」
 なんでしょう。なんでらいてーはそんなおどろいた顔をするのでしょう。
「するのか?音が。」
 あたりまえです。
「オレには聞こえるよ。」
「聞こえる?」
 ふしぎそう。らいてーには聞こえないんでしょうか。
「「生きてるよー、生きてるよー」とくん、とくんって。」
 わわっ、らいてー。顔ふせたらオレの頭にあたっちゃいます!
「…銀、次……っう。」
 …いつものらいてーではないみたいなので「どしたの?らいてー。」と話しかけてみました。…だんだん心配になってきました。
 「いや、少し目にゴミが入っただけだ。」ってこたえ。えー、ここにゴミなんてないのに。でもねんのため。
「そうなの?めぐすりする?」
 手にはじゅーべーのギャグもまっさおなキーンとシミるめぐすりがあります。それを見たからかどうかは分かりませんけど「いや、いいんだ。」とちっちゃく笑いました。ほっ。
「んー。らいてー、あったかーい。」
 オレはらいてーにすりすりしました。あったかーい。
 ところが!です!らいてーもだっこしなおしてくれるはずが…。
「んあ。」
 ら、らいてー、そこ、とりあえず、首。しめてますしめてます…
「らいてー、のばすのはやめてー!」
 くいくいと首がのびていきます。このままでは飛頭蛮になってしまいます。…あ、蛮ちゃんの頭が飛ぶわけではありません。笑師に昔きいたんです…って、ん゛あ゛ー、ぐる゛じい゛…
「俺、何も…してない。」
 してます!してます!だから言っているんです!
「のびてる。のびてる。」
 びろーん、とのびてます。オレだってムリな時はあるんです!
「ぐ、ぐるじいよ゛ …そこ、くびだよ゛」
 ようやく言えました。そしたら「あ、す、すまない」って「ぱっ」て手をはなしたんです!「ぱっ」て。

 …ぼてっ

 落ちました。
「うきゅう。」
 なみだがころんと出てきました。いたかったし、のびてたところがちぢんでつらいし。
「あ、銀次っ」
 びっくりしたらいてーがだっこしてくれましたが、なみだはどんどんでてきます。ぴーぴーないていたら、らいてーも悲しそうな顔になってしまいました。
「すまない、俺は…やはり分れつしてもお前にめいわくをかけてばかりだ。」

ぷち。

 めずらしく、その音を聞きました。
「らいてー、じゅーべーなみのぎゃぐいっていいですかー。」
 なみだふいて、ぷりぷりおこりながら言いました。
「あ…?あぁ。」
 いきなりオレがおこりだしたのでびっくりしたのか、らいてーもびっくりしてます。
「らいてー…さいてー」
「ん…?」
 さいしょ、らいてーは何て言われたか分かっていなかったみたいです。
「あ、う……」
 だんだんそのコトバが分かってきたんだろうけど、その顔を見てるとだんだんかなしくなって、オレは手足をビチビチいわせながら、気づいたらわんわんないてました。
「らいてーはひどいんです。」
 なきながら言ってました。ぽすぽすらいてーの胸をたたきながら言ってました。
「ご、ごめん!俺は……!」
 そのコトバにさらにかなしくなりました。
「いつも「おれは」「おれは」っていうんです。」
 わんわんとなきながらも言います。
「らいてーはひどいんです。」
 ホントーにひどいんです。分かってないんだもん。
「らいてーも「おれ」なんです。」
 ほら、くびかしげちゃって。分かってない。
「らいてーはじぶんをいじめてます。」
 らいてーのかわりにないてるんだい。
「らいてーはひどいんです。」
 ひっく、ひっくってしゃくりあげてしまいました。
「だって…」
 …こまった顔、させたくないけど、かなしくて、かなしくて。
「だって…わらってくれないんです。」
 見上げると、こまった顔のらいてー。
「俺は…お前をまもるためにいるのに、お前のこと考えてやれなくて。」
 ううん、ううん、ちがうんです。
「本当は…消えたほうが、お前のためになるんじゃないかって…。」
 らいてーがなみだをふいてくれました。
「そんなことないもん。」
 ひっくひっくとしながらも言いました。
「銀次…?」
 ちょっとびっくりした顔でらいてーが見てます。
「らいてーも、おれも、「いきてる」「いきてる」ってしんぞーがどくんどくん言ってるんです。」
 らいてーの左むねに耳をあてると、どくんどくんって言っています。ほらね。
「だから「いきていいん」ですっ!」
 らいてーの顔が、本当に「びっくり」な顔になりました。
「銀、次…。でも、お前が良くても。」
「んあ?」
 ハナがないことはありがたいです。銀次だったらハナかんだ手をこっそりらいてーのズボンにおしつけてたでしょう。その時の銀次とらいてーの言いあらそいのほうがコワいです。
「蛮がどう言うか…。」
 なーんだ。
「蛮ちゃんはだいじょーぶぃ。」
 言い切っちゃいました。
「でも…」
「でももすともありません。たしかにむげんじょーではりょうほうともなかったけど。」
 でももすともりょうほうともあったら、今ごろ全員死んでます。
「ああ…。」
 らいてーもわかるでしょ?
「でももすともあるこっちは「じゆー」だって、蛮ちゃん言ってたよ。」
 すごくあこがれてたコトバ。
「だから、蛮ちゃんがどう思おうが、じゆーだとおもうよ。」
 ぽかん、とらいてーの顔がなりました。カナヅチでなぐった時の蛮ちゃんの頭の音よりはかるいです。
「俺は…「自由」……?」
 気がつかなかったの?らいてー。ならオレが言ってあげる。
「そーだよ。」
 そうしたら、みるみるうちにらいてーの顔がこまったちゃんな顔になって…ぽろぽろなみだが出てきました。
「ど、どうしたの、らいてー、どっかいたいの?」
 オレはあわてました。らいてーのこんなすがたを見るのははじめてです。
「あ、あり…が、とう、銀次……。」
 いたいのにおれいなんて言われたのはフシギです。えっと…こういうとき、なんていうんだっけ…えっとえっと…
「…いたいのいたいの…とどまれー。」
 ん?
「…じゃない。飛んでけーだ。」
 ちぇっ、まちがえちゃった。あれ?らいてー、わらってる。
「……飛んだよ。」
「飛んだ?よかったー。」
 ほっ。
「お前のおかげで、きっと…手のとどかないところへ。」
「ううん、みんなのおかげだよー。」
 二人で思いうかべます。
「いがいとえみしがデコおさえて「いてっ」とか言ってたり。」
 ふふ、とらいてーが笑います。うれしいです。
「じゅーべーだったらなにもいわないだろーね。」
「ああ。」
 オレはらいてーのむねにすりすりしながら言いました。
「蛮ちゃんだったらすぐにかけつけてくれるよ。」
 それはうーんと…絶対に。
「そうだな。」
 少しえがおをかえて、でもらいてーはわらって言いました。
「……銀次。」
「んあ?」
 ゆっくりわらいながら、らいてーは言います。それが見たくて、オレも顔をあげます。
「さっき、聞こえなかったかったかもしれないけど、もう一度、言うよ。」
 なんでしょう?
「うん。」
 どきどき。
「ありがとう、銀次。お前にも、みんなにも、かんしゃしてる。」
「ううん、ううん、らいてー。」
 ちがうよ。らいてー。
「おれも、みんなも、らいてーにかんしゃしてるよ。」
 そうしたら、またびっくり顔。今日はらいてーはびっくり箱のようにびっくりしてます。…ちょっとちがうかな?
「なぜ?俺はこのセカイを…」
「ううん。オレはらいてーにかんしゃしてる。」
 気がついて。
「みんなもらいてーにかんしゃしてる。」
 「どうして。」ってぽつってらいてーがきいてきました。オレはむねをはって言いました。
「だって、オレがわらっていられるのも、蛮ちゃんがわらってタバコすえるのも、じゅーべーがさむいギャグとばせるのも、みーんなみーんな、らいてーのおかげだよ。」
 え?なんで悲しい顔をするの?らいてー。
「俺は…ハカイすることしか、できないのに。かんしゃされるなんて、ありえない。俺は…」
 ああん。もう。せなかにヘンなデンパしこまれるくらいじれったいです。
「らいてー、らいてー。」
 オレは、また、らいてーにすりすりってしながら言います。
「らいてーはあったかいんです。」
 ほらまた、びっくり顔。
「あっ、たか、い?」
「うん。」
 すりっとほっぺたをらいてーのむねに当てます。
「どうして?」
 どうして…って?
「こうやって、だっこしてくれるとぽかぽかになります。」
 ぽかぽかとあたたかいんだよ。らいてー。
「それは…銀次の肉体をかりているだけだ。本当の俺は…」
 そうなるとオレだっていっしょです。
「ちがいます。こころもぽかぽかになります。」
 こころにお花ばたけがさいたようになります。分からないかなぁ?
「こころ…」
 うん。そう。
「そうです。らいてーとお話してるとね、ぽかぽかになるんだよ。らいてはーならない?サムくなっちゃう?」

 あわわわ、じゅーべーみたいにこおりついたらどおしよお。

 オレはビチビチビチビチビチビチビチビチとあばれました。

 らいてーは、ビチビチやってるオレをぎゅっとだきしめてくれました。
「いや、銀次があったかいから、凍えることはない。」
 でも銀次でもあのギャグにはこおりつきましたよ?
 でも…
「うん。らいてー、あったかいから、オレも寒くなること、ない。」
 あ、またらいてーがふるふるしだした。寒くないのにぶるぶるふるえるのは…分かんない。
「銀次…。」
「らいてーはぽっかぽかー♪」
 本当に、ぽっかぽか〜♪
「ああ、俺も…あったかいよ、銀次。」
 寒い…で思い出した。
「さいふをすっからかんにーしたー蛮ちゃんにはー♪ふたりでいっしょに〜♪ばりばりどっかーん♪」
 わらいながら、らいてーのほっぺたをむにむにします。すると、らいてーがちょっとイジワルそうな顔をしました。
「ふっとう、させるか?」
 ふっとー…ああ、ヘソで血をわかすんですね。
「ふっとーなんてなまぬるい。」
 ふっとーはぶくぶくいうだけです。
「なまぬるい?」
「ふっとーをこえて、けつえきをかためてしまいましょー!」
 れっつごー!と言ったら、らいてーも「ああ。」と答えてくれましたよ!…こそこそっと「蛮、きのどくに。いや、自分をうらめよ。」と言っていましたが、むしむしむしむしむしむしきんぐです。
「そのくらいやらないと、蛮ちゃんはぎゃんぶるをやめませんっ」
 ありゃ、ツバとばしながら言っちゃった。それ見てらいてーは笑いながら「そうだな。」と答えてくれました。
「うーん。ほんきーとんくにいるときはだめだよねー。」
 ならさっそく計画をしないといけませんっ!
「何なら、無限城中の電気をかき集めてもいいが?」
 楽しいたのしい、サクセンカイギです。
「んあー、その前に蛮ちゃんにきづかれてしまいます。」
 ぽかぽかあったかいらいてーにだっこされながら、オレはちょっとねむくなってきました。
「ねるか?」
 らいてーはお花畑にすわました。お花のかおりがいいね、と言ったら、らいてーはぽんぽんせなかをたたいてくれました。
「らいてーも、いっしょにねよ。」
 うきゅっと両手に力をこめると、らいてーといっしょにぽすんとお花にうもれました。

 ぽかぽか。ぽかぽか。

 うとうと。うとうと。

 シアワセで、シアワセで、うとうとです。
 らいてーのほうを見ると目があいました。らいてーもねむそうです。

 ぽかぽか。ぽかぽか。

 うとうと。うとうと。

 らいてーといっしょに見るゆめは、どんなんでしょーか。

 きっとあったかいゆめだと思います。

 蛮ちゃんが血をかたまらせてるかもしれませんけど。

 でもいいゆめだと思います。

ね、らいてー。そうだよね。